「これまでの人生でおそらく最も役に立った教えは?」
ともし誰かに聞かれたとするならば、僕は迷うことなくひとつの言葉をあげる。
それは高校生の時に愛読していた映画雑誌プレミアに掲載されていた
ロバート・ロドリゲスのインタビュー記事の中にあった言葉。
(インタビュアー)
「映画監督になりたければ、どうしたらいいですか?」
(ロドリゲス)
「簡単なことだ。名刺にフィルムメイカーって書いて友達に配ればいい。
そうすれば君は明日から映画監督だよ。」
というものだ。
僕はこの言葉にかなりの衝撃を受けた。
そういう名前・肩書きは誰かに任命されたり、何かそういう業界っぽい仕事について、
はじめて語ることのできるようなものだと何となく漠然と思っていたからだ。
それからはできるだけその教えを忠実に守るようにし、
名刺を作って、ウェブサイトを作って、プロフィールには
いつもそういう肩書きを入れるように心がけてきた。
(ただ、映画監督とは入れる勇気がなく映像クリエーターという
曖昧なところでぼかしていたのではあるのだけれど)
おかげさまで仕事を回してもらえたり、
いろいろな場所に呼んでもらうこともでき、
そういう経験のひとつひとつによって、
今の自分が作られてきたんだなぁという実感はある。
そんな、これまで使ってきた名刺を、
仕事の中締め打ち上げでご一緒させていただいた
CM監督さんに渡す機会があった。
「駄目だよ、(ディレクター目指すなら)
肩書にはちゃんとディレクターって書かなきゃ」
そう言われて初めて、自分の目指しているものが、
これまでのような漠然とした作り手像なのではなくて
一個の職種なのだと実感し、
自分のやり方というのが、少し前に上手くいっていたときのまま
止まってしまっていたことに気がつき、焦った。
どんなものを作るのかというのはもちろん大切なことだけど、
それをきちんと人にアピールしていくことはもっと大切なことだ。
そしてその方法は状況にあわせて、アップデートしていかなくてはならない。
世界も時代も、自分を取り巻く環境も、毎日変化を続けている。
それを見逃してしまうことだけはないようにしなければ。